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2019.11.13

新しくてエキサイティングな冒険

新しくてエキサイティングな冒険

マテウ・モレイは体格面で恵まれていないかもしれないが、類まれなサッカーの頭脳とセンスの持ち主だ。そして何よりも大切なことに、この世界で極めて高く評価される資質、つまり相手からボールを奪うためにプレッシャーをかけ続けられるファイターでもある。この若きスペイン人サイドバックはプレシーズン中に大きなインパクトを残したものの、肩の負傷で離脱。しかし、冬の足音が聞こえてくる現在では戦列に復帰し、ブラック&イエローの力になろうと意欲を燃やしている。

 

新しいクラブへ移籍して初めて出場する公式戦の試合は、常に大きな意味がある。モレイのデビュー戦は、試合の結果だけでなく、右サイドバックとして50分間にわたって披露したパフォーマンスからも、自身とクラブの双方を満足させるものだった。決然としたタックルでボールを奪い、守備に関する役割をしっかり遂行するだけでなく、機を見た攻撃参加で果敢にハーフウェーラインを越えていった。

 

マジョルカ生まれの小柄なディフェンダーは「チームメートに感謝したい。すごく助けられた。かなり長く離脱していたので簡単じゃなかったけど、ようやく復帰し、こうして再びピッチに立てたことが嬉しい」と語った。とはいえ、まだ大舞台に立てていないことは本人が一番わかっている。この試合のチームメートとは、マルコ・ロイスやアクセル・ビツェル、ジェイドン・サンチョではなく、コルベイン・ビルギル・フィンソン、マグヌス・カーストルップ、そしてジョセフ・ボヤンバ、つまりボルシア・ドルトムントU-23の面々だ。モレイは約800人のファンが見守る中、本拠地ロート・エルデ・シュタディオンにロート=バイス・オーバーハウゼンを迎えたレギオナルリーガ第11節に出場し、2-0の勝利に貢献した。

 

 

半月板の損傷で昨シーズンを棒に降り、新シーズンも肩の負傷で出遅れていたモレイにとっては、待ちに待った実戦復帰の機会だった。2017年のU-17欧州選手権でスペインを優勝に導き、その翌年のUEFAユースリーグでFCバルセロナに栄冠をもたらしたモレイに対し、イギリスのメディアが授けた異名は「次世代のラーム」。ドイツ代表元キャプテンのフィリップ・ラームと同じく、モレイも身体は小さいが、突出したサッカー頭脳を高く評価され、バルサユース在籍時からFCバイエルン・ミュンヘンやユベントス、マンチェスター・ユナイテッドFCなどヨーロッパの強豪クラブに関心を持たれていた。

 

次なるステップ

 

モレイは過去の栄光にすがるタイプではない。これまでの実績を誇らしく思う気持ちはあっても、本人曰く「それで将来的に成功できるとは限らない」からだ。サッカー界で最も名高い下部組織、バルサのラ・マシアで4年間を過ごしていたモレイは、もう少し長くバルセロナに残るという選択肢もないわけではなかった。クラブへの愛情も深まり、故郷ペトラから遠く離れていなかったモレイにとって、慌てて移籍する必要などなかったのだ。下部組織で育てた若き才能をまたしても国外に流出させたバルセロナは、スペインのメディアから批判を受けることになった。しかし、3月で19歳になったモレイは「次のステップを踏み出す準備が整った」と感じ、新天地にドルトムントを選択する。「簡単な決断ではなかった。でも熟考を重ねた末、FCバルセロナでの充実した日々に終止符を打ち、新しくてエキサイティングな冒険に出ることを家族と一緒に決めた」

 

多くの選手が慌ただしく入れ替わった昨夏の移籍市場において、モレイの加入は最大の補強ではなかったが、将来性豊かな逸材として多くの注目を集めた。ヨハン・クライフが監督だった頃からバルセロナに欠かせない攻撃的なサイドバックで、少ないタッチでショートパスをつなぐスタイルに適合し、優れたサッカーセンスを持ち合わせた選手として。ティキタカと呼ばれるバルサのパスサッカーを2000年代に発展させたのが、クライフの教え子ジョゼップ・グアルディオラだ。グアルディオラのサッカーはクライフのそれとはまた少し違うが、美しいサッカーの代名詞として多くの支持を得ている。「ボールと相手チームにすべての仕事をさせる芸術、それがティキタカなんだ」とモレイ。BVBのスタイルにも完全に順応しているようで、「ドルトムントも常にボールを保持する。それがこのクラブのいいところだね」と続けた。

 

 

BVBのルシアン・ファブレ監督もまた、少年時代にブラジルのサッカーに憧れていただけでなく、指揮官としてはクライフに注目し、実際にバルセロナで指導者教育を受けている。スピーディーで創造性豊かなプレーを好むファブレ監督は、ラ・マシアで育った選手の獲得に迷うことなどなかったに違いない。このスイス人指揮官が重視したのは、ひざの負傷で長く戦列を離れていたことではなく、それ以外の部分だった。

 

モレイの評価について質問すると、ファブレ監督は「いい感じだ!」と答えた。監督の人柄をよく知っていれば、この一言にどれだけ多くの意味と重みがあるのかを理解できるだろう。

 

サンチョと対戦

 

ファブレ監督と言えば長時間におよぶビデオ分析で知られているが、間違いなくモレイのハイライト動画もチェックしたはずだ。スピードを生かして右サイドを駆け上がり、毎回のように危険なクロスを供給、的確な判断を瞬時に下すこともできる。2017年にクロアチアで行われたU-17欧州選手権では、モレイがフランスとの準々決勝で鮮やかなゴールを記録。ドイツを退けた準決勝ではPK戦で確実にネットを揺らし、イングランドとの決勝でも同点ゴールを決めた他、またしてもPK戦でキッカーの役割を果たした。スペインの最終ラインの右に入っていたモレイと、その決勝で対戦したのがジェイドン・サンチョだ。決勝で戦ってから2年半後、モレイはこの才能豊かなアタッカーと同じチームでプレーできることを喜び、「ジェイドンは世界屈指の選手になれる」と評価を惜しまない。

 

翌2018年にはUEFAユースリーグで栄冠を掲げた。ヨーロッパのみならず、おそらく世界最強と言ってもいいバルセロナU-19の一員として、モレイの評価も急激に上がったが、そんな矢先にひざを痛めてしまった。手術ではなく保存療法を選択したものの、モレイのシーズンは終了。しかしその後にブラック&イエローからのオファーが届いた。BVBスポーツディレクターのミヒャエル・ツォルクは、モレイ入団に際し次のようなコメントを残している。「マテウ・モレイはバルセロナのアカデミーが輩出したディフェンスの逸材で、技術的なレベルが非常に高い。将来を見据えた補強として考えており、マテウがファーストチームの一員に成長する日を楽しみにしている」

 

プレシーズン中に再負傷

 

BVB加入後はチームに順調に溶け込んだ。FCシュバインベルクとのプレシーズンマッチでは、普段とは違う左サイドバックのポジションで堅実なプレーを披露。1ゴール1アシストと結果を残すと、その後のアメリカツアーでも際立ったパフォーマンスを見せた。バイエルンとのスーパーカップが近づく中、ファブレ監督はアシュラフ・ハキミの攻撃力を最大限に生かすため、このモロッコ代表ディフェンダーを中盤に上げ、その背後にモレイを置くことを決断。この布陣はバートラガーツ合宿最後の親善試合、FCザンクト・ガレン戦で試され、4-1の快勝と手応えをつかんでいた。

 

 

この試合の終盤、モレイはハキミのパスに反応し、ハーフウェーラインに向かって一気に加速。しかしスリッピーな地面に足を取られてしまい、鈍い音を響かせながらピッチにたたきつけられる。その場に駆けつけたハキミは、すぐに手を振ってベンチに合図。モレイはどうにか立ち上がって歩いたものの、結局そのままピッチを後にした。

 

検査の結果、肩を脱臼していることが判明した。手術を要する重傷でなかったことは幸いだったが、いずれにせよ数週間の離脱は避けられない。しかも、1年におよぶ長期離脱からようやく復帰したばかりというタイミングを考えれば、プロ経験が浅い若手にとっては十分すぎるほどの試練だった。

 

愛称は「テリア」

 

その後の2カ月間、モレイはリハビリとドイツ語の習得に専念した。スマホのアプリでドイツ語のメッセージも交換できるようになったが、ファーストチームのスタッフから授かった愛称はドイツ語とは関係のない「テリア」。ボールを奪うまで相手の足首を噛み続ける選手という意味だ。「BVBでチャンスをつかむために戦う」。そう断言するモレイの決意を疑う者など誰もいない。

 

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