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2016.5.19

底力が試された1996年のリーグ連覇

底力が試された1996年のリーグ連覇

今からちょうど20年前の1996年5月18日、ボルシア・ドルトムントはブンデスリーガのチャンピオンになった。2年連続、通算5度目の優勝を果たしたこの1995-96シーズンの戦いを振り返る。

 

グラットバッハから加入したハイコ・ヘルリッヒ

 

BVBの選手たちを興奮させたのは、タイトル獲得そのものではなかった。ほとんどの選手が1年前の優勝を経験し、すでに一度マイスターシャーレを掲げていたからだ。それよりも選手を驚かせたのは、旧ベストファーレンシュタディオンとフリーデンスプラッツを埋め尽くした大勢のサポーターたちの熱狂ぶりだった。

 

「信じられない、センセーショナル、クレイジーだ」。そう語ったアンドレアス・メラーだけでなく、チームのメンバーはこの独特の雰囲気に圧倒された。とてつもない人数のサポーターたちが、タイトル2連覇の喜びに酔いしれた。

 

不安と緊迫の日々、シーズン後半戦のさまざまな挫折、そしてハイコ・ヘルリッヒの移籍にまつわる物語。すべてが吹き飛んだ瞬間だった。1994-95シーズンのリーグ得点王だったヘルリッヒは、このシーズン、念願かなってBVBに加入。デビュー戦は「背筋がゾクゾクした」とのちにヘルリッヒは語っている。カイザースラウテルンと1-1で引き分けたその試合で、ヘルリッヒはBVBの唯一のゴールを挙げた。アウェーでレバークーゼンと対戦したその1週間後の試合も同スコアで終了。ミヒャエル・マイアーは「もっとゴールを奪えたはずだ」とコメントした。

 

13位に落ち込む

 

このシーズンから勝利に勝ち点3、引き分けに勝ち点1が与えられるようになったが、チームは早くもその影響を受けた。もはや引き分けはそれほど大きなダメージではなくなったのだ。しかしハンザ・ロストックの本拠地に乗り込んだ第3節は、奇妙な90分間を戦ったのち、勝ち点を1点も奪えず手ぶらで帰ることになってしまった。アウェーのBVBは、オストゼーシュタディオンで2-0のリードを奪ったものの、昇格したばかりのチームに終盤、3-2と逆転された。「BVBほどのクラブにあのような負け方は許されない」とオットマール・ヒッツフェルト監督は嘆いた。この結果BVBは、13位に落ち込むこととなった。

 

1995-96シーズンの開幕から数週間、新たな“マーケットリーダー”となったBVBが取った行動には、明らかにクラブのレベルを別次元に持っていこうとする意図が見てとれた。クラブはハイコ・ヘルリッヒをはじめ、ユルゲン・コーラー、チェコ人のパトリック・ベルゲル、ウルグアイ代表のルベン・ソサ、そしてヨルク・ハインリッヒ(シーズン途中の加入)といった高額の選手たちを次々と獲得。より合理性を追求していった。

 

ターニングポイントとなったのは、ベーケルベルクでのボルシア・メンヘングラットバッハ戦。アウェーのBVBは苦しみながらも、残り9分に生まれたラース・リッケンの決勝点で2-1と競り勝ち、初白星を挙げた。「ここからがスタートだ」とシュテファン・ロイターは語ったが、その言葉が現実となる。その後4カ月間、チームは連勝を続けたのだ。しかも見事な勝利ばかりだった。まずザンクト・パウリを退けたBVBは、完全に波に乗る。シュツットガルト戦では序盤にクヌート・ラインハルトを退場で失い、10人になったものの、ボビッチ、バラコフ、エウベルの最強トリオを擁していたチームに、6-3と大勝。アイントラハト・フランクフルトとのアウェー戦もゴールラッシュとなり、4-3でシーズン3度目の逆転勝利を収めた。

 

第8節、バイエルンを2-1で退ける

 

ほどなくチームは打倒不可能と思われていたバイエルン・ミュンヘンと激突する。バイエルンはオットー・レーハーゲル新監督の下、開幕7戦7勝と最高のスタートを切っていた。試合は活気あふれる展開となったが、“ゴールの詩人”と呼ばれたソサが途中出場し、最初のタッチとなるFKで見事なゴールをマーク。これが決勝点となって、BVBは2-1の勝利を収めた。

 

チームはこの好調をウインターブレークまでキープ。宿敵シャルケ04でさえ、猛攻を仕掛けてもブラック&イエローの勢いを止めることはできなかった。「シャルケの監督となって最も手痛い敗北だ。本当にショックだよ。サッカーというのは時に残酷なゲームになるものだ」。シャルケを率いていたヨルク・ベルガー監督は、ミヒャエル・ツォルクがラストキックでBVBに2-1の勝利をもたらした試合をそう振り返った。BVBは辛うじてではあったが、勝ち点3を持ち帰ることに成功。サッカーの世界では、このような試合をものにするのが王者なのだ。結局BVBは、12勝4分け1敗の首位でクリスマス休暇に突入。クラブにとっては見事な快挙だった。2位バイエルンとの差は2ポイントしかなかったが、3位チームとは12ポイントも離れていた。

 

故障者は続く

 

マイスターシャーレを掲げるヒッツフェルト監督

 

首位には立ったものの、ケガ人が増え続ける不運を見過ごすことはできなかった。選手がケガにより離脱した回数は92回、筋線維の断裂は14回。シーズンの後半戦はスタメンに起用したい主力がほとんど使えない状態となった。この危機的な状況が最も影響したのがUEFAチャンピオンズリーグの準々決勝。ベストファーレンシュタディオンでの第1戦は、アウェーのアヤックスが完全に試合を支配し、エドガー・ダービッツとパトリック・クライファートのゴールで2-0と先勝。オランダでの第2戦は消化試合の様相を呈した。

 

ブンデスリーガでは首位を堅持していたが、運に助けられた部分も少なからずあった。ハンザ・ロストックにはホームでも敗れ(1-2)、カイザースラウテルンとメンヘングラットバッハでも勝ち点を取りこぼした。しかしミュンヘンのライバルも、この頃には“皇帝”フランツ・ベッケンバウアーとレーハーゲル監督とのメディアを通じたバトルが過熱し、貴重な勝ち点を落としていたため、差を縮められることはなかった。

 

そしてBVBは4位シュツットガルトに勝利し、ようやく胸をなで下ろすことになる。この試合は、当日会場にいた人の誰もが忘れられない一戦となった。ゴットリープ=ダイムラー=シュタディオンまで応援に駆け付けた5000人のアウェーファンたちは、「シャプイサが帰ってきた」とチャント。BVBが5-0と圧勝したため、スコアボードから目を離す暇もなかった。スイス人ストライカーのステファヌ・シャプイサは、十字靭帯の負傷から復帰して以来、なかなか本来の調子を取り戻せずにいたが、この土曜日の夜は2ゴールをマーク。試合を初めて生中継した民間放送局Sat.1も大満足したに違いない。

 

3月末にも転換期が

 

BVBは1週間後のフランクフルト戦でも大勝。これを受けてヒッツフェルト監督は、「チームは実力をいかんなく発揮した。ミュンヘンに行くのが楽しみだ」と強気の発言をしたが、現実はそううまくはいかなかった。「バイエルンがホームゲームであれほど試合終了の笛を待ち望んでいたことはない」とBVBの当時のゲルト・ニーバウム会長は不満げに話した。メーメット・ショルのゴールで先制されたBVBは、最後まで追いつくことができなかった。オリンピアシュタディオンで行われたこの試合では、得点を挙げたショルがシャプイサを殴って倒したものの、何のお咎めも受けなかった。

 

この出来事はブラック&イエローの選手たちに打撃を与え、彼らは勝ち方を忘れてしまったかのようになった。その後の数週間、トップの2チームはいずれもイニシアチブを取ることができず、BVBは引き分けばかり、ミュンヘンの“ドリームチーム”は負けてばかりだった。状況に変化があったのは4月末。ハンザ・ロストックがオリンピアシュタディオンでバイエルンを1-0で破り、レーハーゲル監督が解任された。後任となった皇帝ベッケンバウアーは、バイエルンに再び勝利をもたらそうと意気込んだ。

 

第31節、BVBはカールスルーエで大敗を喫する。「あの0-5で敗北した日は、私にとって人生で一番とも言える最悪な日となった。5分間に3点を奪われたときは見ているのがつらかったよ。うちのチームはKSCに崩壊させられた」。失意のヒッツフェルト監督はそう認め、選手たちに誇りを見せるよう求めた。「私のプライドはズタズタに引き裂かれた。私だけでなく全員のプライドがね」。しかしこのバーデン=ビュルッテンベルクでの惨敗は、BVBにとっていい薬となった。BVBはKFCウエルディンゲンに5-0と圧勝。「埋め合わせをしなければならないという空気がすぐに感じられた」と当時のドイツ代表監督ベルティ・フォクツは話している。マティアス・ザマーを中心としたチームは、勝負をほぼつけたあとも攻撃の手を緩めなかったが、ブレーメンに乗り込んでいたバイエルンは、2-0とリードしながら2-3の逆転負けを喫した。

 

ミュンヘンでの優勝決定

 

タイトルの行方が決まったのは第33節だった。BVBはオリンピアシュタディオンでTSV 1860ミュンヘンと2-2で引き分け、勝ち点1の獲得にとどまったが、バイエルンがゲルゼンキルヘンで敗れたため、BVBの優勝が確定したのだ。ただ、バイエルンの手助けがなくてもBVBはタイトルを防衛できていただろう。「我々は圧倒的なチャンピオンとは言えなかった。シーズンの後半戦は多くの弱さを露呈してしまったからね。しかし情熱を失うことはなかった」とヒッツフェルト監督は冷静にシーズンを振り返った。それでもファンは気にしなかった。2年連続のタイトル獲得を祝うのに忙しかったからだ。

 

 

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