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2019.4.17

ユリアン・バイグル:どん底からの復活(完結編)

ユリアン・バイグル:どん底からの復活(完結編)

ユリアン・バイグルが再び重要な存在になってきている。チームが爆進していたシーズン当初は負傷で戦列を離れていたが、その後新しい役割を見つけ出した。サッカーでは短期間で流れを変えることができる。それを実証した23歳は森を散策しながら、最悪の経験が「いい経験よりも自分のためになっている」こと、そして今後を楽観している理由について語った。

 

諸行無常。目まぐるしく移ろいゆくプロサッカーの世界は、まさにそうだ。しかしブンデスリーガ1年目のバイグルには、そう思えなかったことだろう。2015-16シーズン、当時19歳のミッドフィルダーは2部の1860ミュンヘンから加入すると、瞬く間にスターダムへのし上がった。トーマス・トゥヘル監督はバート・アイブリング出身のひょろっとした若者の大きな才能に気づき、「同じブンデスリーガの小さいクラブへ武者修行に出す」という計画を変更した。

 

トゥヘル監督はバイグルに、武者修行をスキップする方針を伝えた。「トップクラブでのポジション争いの激しさ、プレッシャーの大きさの話をされた」。ピッチ同様、インタビューでも肩肘を張らないバイグルは振り返る。「その一方で、他の選手たちより優れていればチャンスを与えると明言してくれた」

 

 

いきなりスタメンに

 

その言葉通り、バイグルは開幕戦でさっそくチャンスを与えられた。ボルシア・メンヘングラットバッハとのホームゲームで先発起用され、4-0の勝利に貢献。最終ラインの前の狭いスペースでボールを奪取し、頭脳的かつ正確なパスで攻撃の起点となる能力を発揮した。2015-16シーズンに出場したリーグ戦30試合を含む51試合のほとんどで苦労も緊張もなくプレーしているように見えたバイグルには、トゥヘル監督のシステムの中で大いに機能する“パスマシーン”の異名が贈られた。本人は輝かしい1年目をこう振り返る。「考え過ぎたり、ためらったりしなかった。とにかくベストを尽くそうと。あらゆる瞬間を楽しめた、最高のシーズンだった」

 

基本的にポジティブ思考の“ユーレ”(バイグルの愛称)は、流れが止まることへの不安を多少感じつつも、2016-17シーズンに入ってからも活躍。ブンデスリーガの30試合を含む43試合でプレーした。しかし2017年4月11日に予定されたいたチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦の前に起きたチームバス襲撃事件には、他のメンバーと同様にショックを受けた。さらに1カ月後、リーグ最終戦前のFCアウクスブルクとのアウェーゲームで、足首を脱臼して初めて重傷を経験する。2週間後に行われたアイントラハト・フランクフルトとのDFBポカール決勝では、チームの2-1の勝利を見守ることになり、その夏ロシアで行われたコンフェデレーションズカップにもドイツ代表として出られなかった。

 

「BVB愛が深まった数週間」

 

リハビリで一番つらかった時期に、チームメートが見舞いに来て励ましてくれたと言う。中でもマルコ・ロイスは足首の手術を終えたばかりで松葉杖のバイグルをカフェへ連れて行った。「彼は不幸にもケガの扱いに慣れている。だから当時の僕にとって大きな支えだった。他の選手たちもそうだけど、本当に助けてくれた。その数週間でBVB愛がますます深まったよ」

 

4カ月後、回復したバイグルは1FCケルンとのホームゲームで24分間プレーし、5-0の勝利に貢献。正確なパサー、中盤でのメトロノーム役としての役割を十分にこなした。しかし本人は、デビュー当初のような自然なプレーに完全に戻ることは難しいと感じていた。指揮官もペーター・ボス監督に替わり、ポゼッションと守備の安定感を重視する4-1-4-1から、素早いボール奪取からのカウンターを目指す4-3-3への移行が進められた。「復帰戦はそれほど悪くなかった。けど、プレー感覚を完全に取り戻すことはできなかった。ボールを無駄に長く持ち、誤った判断をしがちだった。余計なことをしようとしてしまうんだ。まったく必要じゃないのに」

 

その上、ボス監督は前めの位置でバイグルを使おうとした。「自然にプレーできるようになるのを待つのは難しかった。ボールタッチ数は以前より減ったし」。2016年5月の1FCケルン戦(2-2のドロー)で、バイグルはリーグ記録となる214タッチをマーク。しかし「シャルケ04と4-4で引き分けた試合では新システムのなかで自分の居場所がなかなか見つからず、30タッチで終わった。普段なら開始からの20分でこなしている数だ。さらに、ボス監督の下で僕らは負の連鎖にはまっていった。当時は誰もが苦しんでいた」

 

 

オランダ人のボス監督は2017年に解任され、オーストリア人のペーター・シュテーガーが後を継いだ。しかし、流れを変えるのは難しかった。「4位に入ってチャンピオンズリーグ出場権を確保できたのが、せめてもの救いだったよ」

 

「考え過ぎず、とにかく自分にできることを」

 

2018年夏、ルシアン・ファブレ監督が就任したが、バイグルは恥骨炎のため2年連続でプレシーズンの練習に参加できなかった。医者に運動を止められて休むも、のちに痛みがぶり返し、休養期間は長引いた。ようやく練習復帰した頃にはメンバーが固まっており、アクセル・ビツェルとトーマス・ディレイニーが中盤の底ですでに結果を出していた。レギュラーの座に慣れていたバイグルだが、2人のほかU-21ドイツ代表のマフムート・ダフートにも序列で抜かされた。「中盤のポジション争いが激しくなったことについての不満はない。けど、僕が戻った頃には、他の選手たちは監督の考えや新しい4-2-3-1のシステムをしっかり理解していた。チームはうまくいっていて、時々こう自問した。今さら居場所はあるだろうか?」

 

 

2015年の加入時は開幕からレギュラーとして活躍していたが、このシーズンは第16節までで3試合、ほんの短時間プレーしたのみ。BVBでの4シーズンで最もつらい試練だった。怖いもの知らずだった10代のヒーローからベンチウォーマー、時には単なる観客のひとりに。「状況に満足できなかった。周りにも気をつかわせてしまった。練習後、いつも不機嫌に帰宅していたからね」。しかし幸いにも、彼女のサラ・リッチモンドが支えてくれた。また、気を紛らわせようとラブラドールレトリバーのメーソンと長い散歩に出掛けた。「僕にとって心から休める時間なんだ。家にいると電話やSNSで忙しくなるから」と森歩きの効用をバイグルは説く。

 

だが、今や不満も解消した。ファーストチームで居場所を取り戻したからだ。この冬はマヌエル・アカンジ、ダン=アクセル・ザガドゥ、アブドゥ・ディアッラといった守備陣のレギュラーが相次いで故障。そこでバイグルに、センターバックという新しい役割が求められた。選手のコンバートを成功させることで有名なファブレ監督は、ボルシア・メンヘンングラットバッハをホームに迎えた第17節でバイグルを、十分な経験を持つエメル・トプラクと共にCBとして起用した。「監督が近づいてきて、やれるかと聞いてきた。僕はあいまいな返事をしたよ」。それでもスイス人指揮官は穏やかに続けた。「きっとできるはずだ」。監督はバイグルが代役でCBを務めた2017年のフランクフルト戦(2-2のドロー)のビデオを観ていた。ただその試合では、バイグルはCBの動きがよくわからず、ハーフタイムで代えられていた。

 

 

しかし、今回は経験豊富なトプラクの指導を受けながら新しい役割を事前に覚え、自信も深めた状態で試合に臨んだ。そして2-1の勝利に貢献。その後の試合でも活躍を続けた。突如として、バイグルは以前のように、毎週BVBになくてはならない存在になった。最近こう話している。「プレーしないよりもセンターバックでプレーする方がいい。やってみると、なかなか楽しいよ」。とはいえ、慣れ親しんだ中盤での役割を焦がれる気持ちに変わりはなく、それを隠そうともしない。「中盤の守備的ポジション。一番居心地がいいのはそこであり、実力を最大限に出せるのもそこだと思っている」。実際に、その“ホーム”でも起用されるようになり、バイヤー・レバークーゼンに3-2で競り勝ったホームゲームではアクセル・ビツェルと共に最終ラインの前でプレーした。

 

「おかげで成熟そして成長できた」

 

チームのセミレギュラーとなったバイグルは、最近の苦闘をこう総括する。「今回の経験のおかげで成熟できた。たぶん、成長もできたと思う。つらい経験をいろいろしたけど、それはたくさんのいい経験よりも自分のためになった。事態が好転してくると、最悪の時期に感謝できるようになる」。早くも来シーズンを見据えるバイグルは、経験に基づき2つの目標を立てている。「健康を保つこと。そしてプレシーズンの準備をやり切ること」。それができれば2019-20シーズンは再びバイグルのシーズンとなるはずだ。

 

文:ローラント・ツォルン
写真:アレキサンドレ・シモエス

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