ニュース

2019.9.29

トビアス・ラシュル:トップチームへの第一歩

トビアス・ラシュル:トップチームへの第一歩

昨シーズン、ボルシア・ドルトムントのU-19チームのキャプテンとしてドイツAジュニア選手権優勝に貢献し、今シーズン一気にトップチームの仲間入りをしたトビアス・ラシュル。アカデミー時代から常に責任感を示してきた19歳のサッカー人生は新たなスタートを切った。またイチからの挑戦となるが、ラシュルはこのチャンスを最大限に活用し、できる限り多くのものを学び、そして焦ることなく仲のいい友人の後に続きたいと考えている。

 

バートラガーツでの夏合宿4日目、ルシアン・ファブレ監督がタッチライン沿いでジェスチャーを交えて選手たちに指示を送っている。ブンデスリーガを2位でフィニッシュしたBVBは、複合施設Ri AuのピッチでFCチューリヒとの親善試合に挑んでいた。「ここだ! 違う、前! お前じゃないトーマス、トビに出せ! そう、それでいい!」。選手たちを正しく動かすため大声を出すファブレ監督。この日は特にある選手に10番の役割を担わせ、相手への仕掛けとパスのつなぎ役を任せようとしていた。

 

「フィードバックはとても役に立つ。すべてを吸収したよ」。このスイスでの試合の数週間後、ラシュルはそう語った。「監督は最初、僕に新しい役割とポジションを与えなければならなかった。僕みたいに経験がまだ浅い選手は助けや指示が必要なんだ」。その言葉には監督への感謝と尊敬が感じられた。一方、ファブレ監督は、高い才能と学ぶ姿勢を持った若い選手たちの指導に定評がある。ラシュルは言う。「監督は何百人という若い選手たちを見てきた人だからね。おかげで僕は今自分がどういう位置にいて、何が足りないか、何を改善しなければならないかわかっている」

 

ラシュルは幸い、自分に向けられた注目にあまり気づいていない。ドイツの有名なサッカー誌『キッカー』は、チューリヒ戦について「ファブレ監督はいつもの4-2-3-1のフォーメーションを採用したが、目を引いたのはトビアス・ラシュルに10番の役割を担わせたことだ」と書いた。チームのキャプテン、マルコ・ロイスも合宿の終わりに、「最年少の選手たちがものすごく大きなインパクトを残した。あの若さでこのレベルの試合に出るのは簡単ではないんだけどね」と話している。

 

 

ラシュルはプロサッカー選手の世界に飛び込んだばかりだ。1FCシュバインベルクとの親善試合でBVBの今季初ゴールを記録した数日後、アメリカへのPRツアーの一員としてチームと共に大西洋を渡った。「ものすごく刺激的だった」とラシュルは振り返る。「時差ぼけのまま練習し、2試合を戦うというのは僕にとって別次元の体験だったけど、できるだけ楽にこなせるようすべてが配慮されていた」。アメリカツアーとトップチームの練習に参加した最初の数週間について語る際にラシュルが使うのは、圧倒された、楽しい、エキサイティングといった言葉。思慮深く、思いやりがあり、インタビューにも協力的、そしてサッカーの才能にも恵まれているラシュル。それは彼の生い立ちに関係がある。

 

ルーツ

 

ラシュルのことを理解するには、まず両親と兄弟を知る必要がある。家族が住むのは、デュッセルドルフ・ウンターラートの1960年代の建物が並ぶエリア。41番と書かれた2階建ての質素な家がラシュルの実家だ。両親は都会から離れた場所ではなく、仕事場の近くに住むことを選んだ。そうすれば父ロベルトは毎晩、妻や子供たち(ハンリク、トビアス、レオニー)と一緒に夕飯を食べられるし、子供たちも日中、必要なときすぐに父親に会えるからだ。

 

ラシュル家はここで70年にわたって板金業を営んできた。父ロベルトの跡を継ぐのは、高校卒業後に自動車工としての訓練を受けた21歳の兄ヘンリクだろう。19歳のトビアスも兄に続く可能性はあった。しかし、「サッカーが私から一人の板金工を奪った」とロベルトは苦笑いする。結局のところ父親が息子に望むのはただ一つ、今後の人生で起こりうるさまざまな試練に対処する術を身につけてほしいということだ。

 

「我々は職人だ。プロのサッカー選手になれる可能性は100万分の1しかないんだぞ」。4年前、BVBへの移籍話が浮上した際、ロベルトは息子にそう話した。その1年後、クラブに近い場所への引っ越しが提案されたときには、母ナディーネが警告した。「サッカーのためだけに家を出るなんてダメ。卒業試験に合格するのが条件よ!」と。

 

学業とサッカーの両立

 

「最初はすべてが順調だった」とラシュルは言う。「でもU-17、U-19と上がっていくにつれてストレスが多くなっていった」。DFBでの1週間のトレーニングとBVBでのUEFAユースリーグの遠征が終わったときには、試験を受けるなど無理だと感じたという。「とてもこなせない!と思ったよ。でも両親は合格を願っていた。補習とクラブのサポートでなんとか合格できたんだ」

 

 

どんなに才能があっても、いつケガでキャリアが閉ざされるかわからないのがスポーツの世界。卒業証書はそのときのための保険のようなものだ。ラシュルもそのことは理解している。「いつか役に立つときがくるかもしれない」

 

ラシュルは8歳で地元のSGウンターラートからボルシア・メンヘングラットバッハに加入。そこで初めて、トップレベルのサッカーに触れることになる。「プロのプレーを見るのは、いつだってエキサイティングだった」とラシュルは話す。しかしU-13チームに上がったとき、戦力外通告を受ける。「そこまでは順調だったんだが、ある日突然、『テクニックはあるがスピードが遅すぎる』と言われてしまったんだ」と父親は振り返る。「トビはもちろん打ちのめされたよ。ヘンリクも泣いていたね」。

 

2013年の夏、ラシュルはフォルトゥナ・デュッセルドルフに移籍。しかしそこですぐに頭角を現し、U-14チームでキャプテンに指名されると、2015年にはBVBの目に留まることになる。「とにかくトライしてみたい、それが次のレベルだ」。そう言う息子に父親は答えた。「やってみなさい。うまくいかなくても私たちがついている」

 

結局、ラシュルの望みどおりに事は進んだ。父ロベルトはU-16のクリスティアン・フリュートマン監督、U-17のハネス・ボルフ監督との最初の話し合いから好印象を持ったという。「どんな人が息子の面倒を見てくれるのか知りたかった」。BVBに来て最初の1年は車や電車で通っていたラシュルだが、今はクラブに近いドルトムントのクロイツフィアテルでホストファミリーと暮らしている。「ホームシックにはならなかったね。むしろ母さんのほうが寂しがっていたよ」。ブラック&イエローではU-16、U-17、U-19と昇格していき、そのすべてでキャプテンを務めた。

 

 

「U-17のレベルではプロになることやブンデスリーガでプレーすることなどあまり考えない。ジュニアリーグのことやサッカー以外のこと、例えば学校などにしか目が向いていないからね。でもある段階でふと思うんだ。『プロになりたい、できればボルシア・ドルトムントで』と。でもそれがいかに難しいかは皆わかっていた。僕らの上の世代では、ヤコブ・ブルーン・ラーセンとクリスティアン・プリシッチしか達成できていなかったからね」。しかしユースでの最後のシーズン終了後、ラシュルはチームメートのルカ・ウンベハウンとパトリック・オスターハーゲと共にクラブと初めてプロ契約を結んだ

 

トップへのステップアップ

 

「同世代の選手の多くが今、ブンデスリーガ1部または2部のクラブと契約を交わしている。ドルトムントの育成システムはトップクラスだよ。コーチ陣もテクノロジーもトレーニング施設も、すべてがプロフェッショナルだ。最終的にどのクラブに行くことになるとしても成功を収められるよう指導されている」と話すラシュルだが、自身は他ではないここドルトムントでブレークしたいと考えている。「ものすごくビッグなクラブだし、ここにはたくさんチャンスがある」

 

2019年はチームのU-19ドイツ選手権優勝に貢献。シャルケとの準決勝では2試合ともPKからゴールを決めた。VfBシュツットガルトとの決勝では、1-3とリードされたものの、キャプテンとしてチームを鼓舞し、気持ちのこもったパフォーマンスで5-3の逆転勝利へと導いた。試合後のインタビューでラシュルは、「こんなふうにスコアをひっくり返すことができるなんて本当に信じられない気持ちだよ。他の何とも比べものにならない」と語っている。

 

 

このグロースアスパッハでの決勝でユースに別れを告げたラシュル。そして2019年7月3日(水)、胸の高まりと共に神聖なるトップチームの控室に足を踏み入れた。チーム内の“融合大臣”として知られる元キャプテンのマルセル・シュメルツァーが、12歳年下の新入りを手助けしたという。「チームに加わり、自分も一員になったときの気分は最高だった」とラシュルは言う。「でも練習内容はユースのときよりかなりハードだ。スピードも早いしフィジカル面でもきつい。1日2回のハードなセッションで心身ともに疲労困憊したよ。でも成長したかったら常にコンディションを整えておかなければならない。プレシーズンの内容には満足している。監督からもフィードバックがもらえたし、全体的にはうまくいったと思う」

 

プレシーズン中、3試合でスタメンに入ったラシュル。しかしシーズン開幕が近づくにつれ、トップチームの上位20人に入るレベルには(まだ)到達していないことに気づかされる。「その点は納得しているし、問題ない。現実を見なくちゃいけないからね。ユースチームでは自分がリードギターを担当していたけど、これからはそうじゃないことをちゃんと理解してやっていく必要がある」

 

ラシュルはブルーン・ラーセンと仲が良く、大事な話もよくするという。「ヤコブも1年目にブレークしたわけじゃなかった。焦らず、練習でハードワークを続けていた」。FCアウクスブルクとのブンデスリーガ開幕戦の前日、ラシュルはブラック&イエローのユニフォームを身にまとってピッチに立った。そこは8万人の大観衆が出迎えるジグナル・イドゥナ・パルクではなく、U-23チームの試合会場。NECナイメーヘンと親善試合に出場したのだ。仕事をしっかりこなしたラシュルは、それほど失望しているように見えなかった。U-23への降格は一歩後退ではなく、出場機会を得られるチャンスだからだ。ラシュルは1年目の目標を明確に定めている。「決して情熱を失わないこと。最初の年なのだから弱点の克服に励めばいい。落ち込む必要などないよ」。19歳の口から出てきたのは成熟した大人のセリフだった。

 

文:ボリス・ルパート

 

【関連記事】
運動量が多くファウルの少ない好ゲーム
ビュルキ:「アグレッシブさが足りない」
2-2:ブレーメンに追いつかれ2戦連続ドロー

border
ニュース一覧に戻る

最新ニュース

パンサー尾形のBVBブランドアンバサダーブログVol.33

2020.7.5

パンサー尾形のBVBブランドアンバサダーブログVol.33

BVBブランドアンバサダーを務めるパンサー尾形貴弘さんのブログ第33回を公開!   Vol.33 総括!!   ブンデス最終戦! ホー 続きを読む>>

武田玲奈のBVBブランドアンバサダーブログVol.4

2020.7.2

武田玲奈のBVBブランドアンバサダーブログVol.4

BVBブランドアンバサダーを務める武田玲奈さんのブログ第4回を公開!   Vol.4 BVBブランドアンバサダー:1年を振り返って 続きを読む>>

BVB 20/21ホームユニフォーム発売

2020.7.2

BVB 20/21ホームユニフォーム発売

選手たちは来シーズンの前に充電期間を過ごすが、私たちにとってのエキサイティングで濃密な20/21シーズンはもう始まっている – 続きを読む>>